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女児向けアニメーションを制作しました!/増田桃子(4年)

 皆さん、こんにちは。2018年3月に本大学を卒業する増田桃子と申します。今回の記事では、私の卒業制作作品についてご紹介したいと思います! また、卒業論文や卒業研究発表会ではお伝えできなかった、私の感想もお伝えしたいと思います!
 本記事の構成は、以下の通りです。

 ・作品紹介
 ・制作のきっかけ
 ・メイキング
 ・制作を終えて
 ・使用音源

■作品紹介
 私は卒業研究にて、2Dのデジタルアニメーション作品『Cosmetics』を制作しました。本作品は化粧に対しての興味関心が薄い女児に対して、化粧によって美しく変身することの楽しさや、大人に成長することへの憧れを触発させることを目的としています。早速ですが、作品をご覧ください。


『Cosmetics』

 

■制作のきっかけ
 制作のきっかけは、化粧の楽しみを人に伝えたいと考えたからです。私の身の回りでは、化粧(本作品ではポイントメイクに限定する)をしない女性が多く見られました。彼女たちに理由を聞いたところ、「面倒」という意見が多くあげられました。以前、私も面倒という理由から、あまり化粧をしていませんでした。しかし、特別学期の「メイクアップ講座」を受講して、化粧できれいになる喜びを知り、また楽しいと感じるようになりました。その後、私は化粧が好きになり、日常的に化粧をするようになりました。この経験から、化粧をしない女性に、化粧によって変身することの楽しみを伝えたいと考えました。

 作品のターゲットとして女児を選んだ理由は、子供は映像作品にインスピレーションを受けやすく、子供のころの憧れや楽しみは大人になっても持続すると考えたからです。そのため、成人女性に向けて制作を行うよりも、化粧の魅力をより伝えられる効果があると考えました。

■メイキング
 制作の流れは、以下の通りです。制作期間は、8か月です。

制作の流れ
制作の流れ

 

 制作に使用した機材は、ノートパソコンとタブレットです。画面に直接書き込むことが可能なタブレットを使用することで、作画が楽になりました。しかし、タブレットは4~5万円ほどで購入したので、出費が痛かったです……! ですが、作画は一番時間がかかる工程なので、購入しておいて本当によかったです。

制作に使用したタブレット
制作に使用したタブレット

(TOSHIBA dynabook Tab S80:https://dynabook.com/mobile-notebook-tablet/s-series/s80t-2015-fall-winter-model-satin-gold-10-1-inch-pen-tablet-ps80tgp-nya/spec.html

 

 制作に使用したソフトウェアは、以下の通りです。

 ・CLIP STUDIO PAINT PRO(ペイントソフト、作画で使用)
 ・AnimeEffects version 1.3.4(キーフレームアニメーション制作ツール、アニメーション効果で使用)
 ・AviUtl version 1.00(動画編集)
 ・HandBrake 0.10.5.0(エンコードツール、動画圧縮の際に使用)

 本作品は、作画で使用した「CLIP STUDIO PAINT PRO」を除き、フリーソフトウェアのみで制作が可能です! 「CLIP STUDIO PAINT PRO」は、ダウンロード版を5000円で購入しました。作画で有料ソフトウェアを使用した理由は、機能が多く、効率的に作業ができるからです。

 制作にあたり、まずはキャラクターデザインとストーリー構想を行いました。キャラクターデザインでは、過去3年間を通して、女児に人気があるアニメーション「アナと雪の女王」と「プリキュアシリーズ」を分析しました。分析した2作品に共通する「目が大きい」「瞳や髪がカラフル」などの条件を参考に、キャラクターデザインを決定しました。

女児に人気があるアニメーション
女児に人気があるアニメーション

(株式会社バンダイ『お子さまの好きなキャラクターに関する意識調査』より抜粋:http://www.bandai.co.jp/kodomo/search_cara.html

 

 以下の画像は、キャラクターデザインの一部をスケッチブックから抜粋したものです。化粧前と化粧後の差別化を図るために、髪の毛をほどく描写を入れたかったので、髪型をおさげにしました。女の子が髪をほどいたときのギャップは本当にかわいいですよね!

キャラクターデザイン
キャラクターデザイン

 

 キャラクターやストーリーのイメージが決定したら、絵コンテを作成します。絵コンテとは、映像を制作する際の指示書のようなものです。これを基にアニメーションを作るため、かなり慎重に作成しました。以下の画像は、絵コンテの一部抜粋です。作品が完成した後に絵コンテを振り返ると「本当に一から作り上げたんだなあ」と、感慨深くなります。

絵コンテ
絵コンテ

 

 続いて、絵コンテのイメージ通りに原画を描きます。こちらも、スケッチブックでのアナログ作業となります。タブレット上で原画を描くこともできますが、一から絵を描き起こす際は、紙に直接描いた方が描きやすいので、スケッチブックに描いています。以下、原画の一部抜粋です。

原画
原画

 

 原画を描いていたころは春休み中だったので、よく旅行に行っていました。かなり個人的な話ですが、旅行中に描いた原画には、旅先の地名がメモされています(笑)。もちひよ名義の記事「震災から6年 浪江町の現在」(メールマガジン『やりとり』第129号)の旅行の際、私は宮城県多賀城市に宿泊しており、その地名も書かれています。

旅先のメモ
旅先のメモ

 

 原画が完成したらスキャンし、データ化します。ここからがデジタルでの作業となります。「CLIP STUDIO PAINT PRO」で原画をトレースし、線画を作成します。その際、後から線を修正できるように、ベクター形式で描画します。私はフリーのペイントソフトウェアや、「ペイントツールSAI」を使用したことがありますが、線画の書きやすさでは、「CLIP STUDIO PAINT PRO」がダントツで一番です。ベクター線を描画する機能が充実していて、非常に便利です!

線画
線画

 

 線画を描き、歪みなどを修正した後は、着色作業に入ります。着色の際は、あらかじめ色見本を作成しておき、パレット代わりに使用します。また、次の工程でアニメーション化することを踏まえ、レイヤー分けを細かくしておく必要があります。着色にあたり、多くの女児向けアニメーションの着色で用いられている、ツヤ感と透明感を重視しました。
 主人公の化粧は、着色の段階で決定しました。アニメキャラクターは、もともと顔立ちがはっきりしているため、化粧は薄めにしました。また、化粧の色味は、主人公がブルーベース(黄味を含まないピンク寄りの肌)であることを想定し、黄味を含まない色味にしました。主人公の肌をブルーベースと想定した理由は、私の肌がブルーベース寄りであるため、化粧の色味をイメージしやすかったからです。

化粧の色味
化粧の色味
色見本
色見本
着色と作画の作業画面
着色と作画の作業画面

 

 着色が完了したら、いよいよ、アニメーション効果を付ける工程です。本作品では作画枚数を必要最小限にするため、ソフトウェアを用いてアニメーション効果を付けています。まず、作画時のレイヤーをアニメーション効果を付けるパーツごとに結合し、「AnimeEffects」で読み込みます。この際、ファイルの拡張子は「AnimeEffects」と「CLIP STUDIO PAINT PRO」に互換性がある「PSD」にします。

アニメーション効果を付けるパーツ
アニメーション効果を付けるパーツ

 

 作画したパーツを読み込んだら、各パーツに移動や回転などのキーフレームを付けて、アニメーション効果を付けます。主人公の髪や腕には動きを付けるためのボーン(関節)を付け、ポーズの設定を行います。

AnimeEffectsの作業画面
AnimeEffectsの作業画面
ボーン(関節)
ボーン(関節)

 

 化粧シーンは、肌と同色のパーツでメイク部分を隠し、移動させることで表現しています。この方法は制作当初から考えていました。化粧シーンを見た方の多くは座標を指定して、メイク部分を機械的に描画しているように錯覚していると思います。私も制作当初は、座標を描画する方法を考えました。しかし、この方法は難しく、作業が複雑化する可能性が高かったため、採用しませんでした。代わりに考え出したのが、肌と同色のパーツでメイク部分を隠す方法です。この方法は簡易的に表現が可能であるため、採用しました。以下の画像は肌と同色のパーツをずらし、アイシャドウと口紅を塗っているように見せている例です。

肌と同色のパーツの使用例(1)
肌と同色のパーツの使用例(1)
肌と同色のパーツの使用例(2)
肌と同色のパーツの使用例(2)

 

 アニメーション効果を付けた後は、各シーンを動画として書き出し、編集のため「AviUtl」で読み込みます。絵コンテ通りに各シーンを結合し、文字や音源を合成したものを無圧縮で書き出します。書き出した動画を「HandBrake」で圧縮したら、完成です!

AviUtlの作業画面
AviUtlの作業画面
完成作品のタイムライン(赤:音源/青:動画・画像・文字 / 緑:エフェクト)
完成作品のタイムライン(赤:音源/青:動画・画像・文字 / 緑:エフェクト)

 

■制作を終えて

 3年生の後期から春休みにかけて作品を企画し、完成に至るまでの間は、本当に長かったです。作品を完成させることができた今は、「やりきった」という思いです。4年生になってからは就職活動もあり、両立が大変でした。しかし、作品制作はとても楽しかったです。特に楽しいと感じた点は、自分のこだわりを形にする作業です。また、本作品の中で一番のこだわりは、人物や化粧品のツヤ感と透明感です。着色の際に何度も試行錯誤をし、現在の塗り方に至りました。
 卒業研究発表会で作品を発表し終わり、私は「思い描いていた結果になってよかった」と思いました。私が入学した当初、私が所属するゼミは、映像作品やデザイン作品、メディアアート作品を制作する人が多いゼミでした。私は先輩たちの作品に憧れ、希望したゼミに入れるように勉強を頑張り、今のゼミに配属になりました。そして配属された年、先輩たちの卒業研究発表会を観て「私もいつか、あの舞台上で、自分の作品を発表する日が来るんだなあ」と思いました。そして先輩たちのように、素晴らしい作品を作り上げている自分を想像していました。
 作品を制作しているときは、思うようにならないことが多く、とても苦労しました。「この作品を、胸を張って発表できるのだろうか」と考えたこともありました。しかし地道な作業を続け、作品を完成させた今、先輩たちと同じように舞台上で作品を発表し終えた自分がいました。ありがたいことにゼミのメンバーや教員、卒業研究発表会の観客の方から「すごい」といった意見をいただき、本当に嬉しかったです。2年生の当時、想像していた自分と同じでした。それに気づいたとき、私は心から感動しました。今のゼミを選び、目標に向かって努力して、本当によかったと思います。

 さて、今回の記事は私の最後の記事になります。最後の記事だと思うと寂しいですが、今まで様々な事柄をご紹介できて、本当に楽しかったです。記事を添削していただく学科の助手さんとのやりとりも、とても楽しかったです。それでは皆さま、ご愛読ありがとうございました!!

■使用音源
 ・学科購入の音源素材
 ・Killy『効果音ラボ』<https://soundeffect-lab.info/>(フリー音源)

 ※音源は利用規約に従って使用しています

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