授業紹介・ゼミ活動

PBL

大森ゼミ

大森ゼミ 2016年度卒業研究要旨

2017/04/20

実践型研究を通して考える観光の現状と課題への取り組み

 近年、「インバウンド」「2020年までに2000万人」という言葉を聞く機会が増えたように思う。実際、2015年1月18日に関西国際空港の国際線の旅客が1000万人を突破しており、過去最高を記録した。また、多くの外国人観光客が日本食を食べることや買い物をすること、歴史や伝統文化に触れることに興味を持ち、日本を訪れている。外国人が日本を訪れる「インバウンド」という言葉が世間に知れ渡り、東京オリンピックが2020年に開催されることから訪日外国人旅行者数を「2020年に2000万人」と言われるようになった。そして「観光」というキーワードに再び注目が集まったのだ。そこで私たちは「観光」をテーマに論文を書き進めることにした。第Ⅰ部は「観光の多様性」に着目し、今日までどのような歴史を辿り、今後どのように発展していくかについて考察した。第Ⅱ部はインバウンド観光の観点から、よりインバウンド観光を活性させるための手段として観光まちづくりに着目した。第Ⅲ部は海外渡航から現代の海外旅行の形になるまでの推移を辿り、アウトバウンドの課題について考察した。

 第Ⅰ部では、一般的な観光の定義と本論における観光の定義をし、その推移を述べる。本研究での「観光」は、ある土地を拠点とし日常生活圏を離れ、さまざまな土地を巡回的に旅行し、最終的に元の地にもどる行為と定義した。また統計的に観光を把握する必要がないため、帰省やビジネスを目的とする旅行は除き、純観光のみを検討した。さらにストーリーを持った観光を中心に研究を進めた。団体で同じ観光地に行き同じことを行うマスツーリズムの時代は幕を閉じ、個人のライフスタイルや価値観を色濃く映し出した新たな観光が台頭した。観光が多様化した結果、観光者の観光行動は複雑化したため、整理するために7つに分類を行い、観光をパターンで分析した。

 第Ⅱ部では、インバウンドの現状・訪日外国人の動向を述べ、人口減少時代を迎えた現在のインバウンドの必要性について整理した。さらに、インバウンド観光の傾向から、よりインバウンド観光を活性させるための手段として観光まちづくりに着目した。日本のすべての都道府県、また市町村においてこうした観光の振興に向けた取り組みが推進されている。世界的な旅行者人口が増加している状況を活かし、海外からの旅行者を取り込むことで、少子高齢化による国内観光市場の減少を補いたいということが政府の考えである。従来のように国内需要ばかりに頼っていては、日本の観光産業を支えていくことはできない。人口の減少や高齢化による地域活力の低下などを受けて、これまで観光には取り組んでいなかった地域でも、観光の振興を目指す動きが出てきた。こうした地域が観光地として振興するために注目をされているのが、観光まちづくりだ。地域経済への波及効果と合わせて地域が活性化されることが期待できる。私たちは、増加する訪日外国人観光客を自分たちの地域へどのように呼びこむのかを考え、観光まちづくりを実践していくことが今後の日本の観光において重要であると考えた。そして「大学生観光まちづくりコンテスト2015」で発表した「目利きで大阪の魅力を再発見」についての成果報告をする。

 第Ⅲ部では海外渡航から現代の海外旅行の形になるまでの推移を辿り、アウトバウンドの課題について考察した。1960年代までの日本における「海外」とは、観光を楽しむために出かける場所ではなく仕事や学びなどを目的とするものであった。その後、海外渡航が自由化され、仕事以外での海外渡航が少しずつ増加した。1970年以降は格安航空券の登場・発展により多くの人々の海外へ行く機会を拡げ、大衆化に大きく貢献した。しかし、2000年以降に注目を集めたスケルトンツアー(交通と宿泊は決めるものの、行程のほとんどが自由となっているパッケージツアー)によって、低価格、短期間のツアーが主流となり、現代では海外旅行の魅力が低下していると言われている。出国率の推移を見ると、20代若者の出国率が停滞傾向にある。そこで20代若者の出国率の停滞を現代におけるアウトバウンドの課題として定義づけし、若者にとって魅力のある旅行商品とは一体どのようなものなのかを考えた。そこから自分たちで企画を考え、アウトバウンドの課題である若者の旅行離れについて考察し、2つの事例「第6回関空発『学生と旅行会社でつくる』海外旅行企画」、「海外卒業旅行企画コンテスト2015」について成果報告をする。

 このようにインバウンドとアウトバウンド、2つの面で日本の観光産業について観光者にとって有意義な時間を過ごしてもらうことを第一に考える観光について研究を進めてきた。旅行形態は時代の変化によって形を変えていく必要性がある。旅行時の国の状況、経済状況、人の関心などによって、受け入れられる観光の形も変化していく。その変化を読み解くためにも、観光者について調査し、詳しく知ることは重要なことであることが今回の研究を通して学ぶことができた。

トップへ戻る