みなさん、こんにちは。お久しぶりです。吉です。
もう7月の末ですね。いつの間にか自宅のリビングに扇風機が置かれていたり、冷蔵庫の中にはアイスが常備されていたり……。暑さが日に日に増しているように感じる今日この頃です。
さて、今回は「和」についてお話ししたいと思います。
みなさんには「あぁ、日本人でよかった」と思う瞬間はありますか? 日本食がおいしかったり、桜や紅葉などを見て季節の移ろいを感じたりするとそう思う、という方が多いのではないでしょうか。
日本のおいしい食べ物と自然も魅力的ですが、私はやはり、アニメやゲーム、漫画などのサブカルチャーを通してそう思うことが多いです。素敵だなと思う作品に出会えたり、大好きな作品が多言語に訳されて親しまれていたりする姿をみると、なんだか嬉しく誇らしい気持ちになってしまいます。
そんな「日本人でよかった」「日本って良いな」と私が思うきっかけになったのが今回紹介したい、DMMゲームズが提供している『刀剣乱舞‐ONLINE‐』です。
このゲームのあらすじを簡単に紹介します。
時は西暦2205年。過去へとタイムスリップし、歴史を変えようと企む「歴史修正主義者」に対抗すべく、政府は過去の時代へ「審神者(さにわ)」を派遣します。審神者は日本刀の付喪神である「刀剣男士(とうけんだんし)」と共に、歴史を守るべく歴史修正主義者との戦いに挑むというお話です。
ここで審神者についてお話ししましょう。本来の神道で使われる審神者とは、神や霊が乗り移った状態の人に対し、質問を通してその神や霊が本物であるかを判断する人のことで、神様や霊をおろす人とは役割が分かれています。おろされた神様が本物かどうかの判断を下す者……。だから審判の「審」に神様の「神」で審神者と書くのですね。
一方、刀剣乱舞での審神者は、物(ここでは刀剣)の想いや心を目覚めさせ、自ら戦う力を与える、という技を持つ者のことです。一見、神をおろす人のように感じますが、その刀剣の付喪神かを判断して力を与えるという仕事も、もしかしたら込められているのかもしれません。
さて、改めてこのゲームの概要を簡単に言うと、プレイヤーが審神者となり、日本刀の付喪神である刀剣男士と共に歴史修正主義者を倒す、というお話です。「なぁんだ。かっこいいキャラクターが登場する和風ファンタジーゲームか」と思いませんでしたか? そんなあなた、ちょっと待ってください。それだけで終わってしまうなんてもったいないですよ。このゲームを通して日本の良さ、面白さを少しでも感じてみませんか?
私がこのゲームを知って、まず面白いと思ったのは「付喪神」という神様の存在です。動植物や物に魂や霊が宿るという考え方、不思議だとは思いませんか? これはアニミズムとも呼ばれています。検索サイトでアニミズムについて調べてみると、関連項目には日本の付喪神だけでなく、ディズニー映画の『アラジン』に登場したランプの魔人ジーニーのような「ジン(イスラム圏で精霊という意味)」もありました。千夜一夜物語をモチーフにした漫画『マギ』にもジンという精霊が登場し、登場人物たちが長い間身に着けている金属器にそのジンが宿ります。また日本の妖が登場する漫画『夏目友人帳』では「影茶碗」などがそうでしょうか。
私たちも小さい頃に「物は大事にしなさい」「使い古した物を捨てるときはありがとうと言いなさい」と言われたのは、この考え方が日本に古くから浸透していたからかもしれませんね。
「付喪神」という言葉だけで、なんだか国を超えた思想の面白さも感じませんか?
次に、刀剣男士たちの「紋」についてです。
紋というと、家系や団体など、それを表すしるしとして用いる図形で、天皇家の菊花紋がピンとくるでしょうか。更に、身近にある紋だと私たちのパスポートにも菊がありますし、お墓に行くと、それぞれのご先祖様のお墓にも紋が刻まれています。
話が戻りますが、刀剣男士たちにも一振りひとふりを象徴する紋があります。例えばこの紋。「鶴丸国永(つるまるくになが)」という刀剣男士とその紋です。
鶴丸国永の紋/刀剣男士の「鶴丸国永」
刀剣男士の鶴丸国永の紋は「鶴紋」という紋の種類のなかの「鶴丸」という紋がモデルになっているようです。鶴をモチーフにした紋である鶴紋は鶴丸だけではありません。鶴丸とは逆に1羽が下向きに羽を広げている「降り鶴の丸」や2羽が左右に分かれて羽を広げて向かい合っている「対い鶴」、その対い鶴を上下に別れさせた「上下対い鶴」など様々な種類の鶴紋があります。
そしてこの鶴丸の紋を見ていると、刀剣男士の鶴丸国永の優美で凛々しい印象が、鶴丸の紋からも伝わってくるような気がします。
さてこの鶴丸の紋、「どこかでみたような……」と思いませんか? 黒を赤にしてみると……? もうお判りでしょうか?
そう、日本航空(JAL)のロゴマーク!
鶴丸国永の紋とはデザインが違いますが、これも鶴紋をモチーフとしたデザインの一種です。JALのロゴマークにも歴史があるようですので、気になった方はJALの歴史について調べてみてくださいね。
刀剣男士たちは歴史的にも有名な日本刀をモデルとしていて、その彼らを実際に振るっていた主たち(織田信長などの偉人)が刀剣男士の台詞の中で登場します。実際の日本刀についての逸話を調べてみると、彼らの容姿やゲーム内で話している内容、主たちとの関係、またこの紋の由来なども見えてきますよ。
史実と異なる場合もありますが、歴史の勉強にもなります。笑
最後に、紋に引き続き「文様」についてお話ししましょう。
冒頭で紹介した公式設定画集『刀剣乱舞絢爛図録』では、46振りの刀剣男士の設定資料が載っています。じっくりと彼らの着ているものの文様を見て、またもや既視感を覚えました。
「私の持っている振袖と同じ文様だ!」
持っている振袖の地紋
上の写真の文様は、紗綾(さあや)文様といい、「三日月宗近(みかづきむねちか)」の狩衣(かりぎぬ)風装束の布地や「厚藤四郎(あつしとうしろう)」の左肩にある装備品にも似たような文様があります。
「三日月宗近」の狩衣風装束の布地
「厚藤四郎」の左肩にある装備品
紗綾文様は、梵語の「卍」を崩して連続させた文様で、中国から輸入された「紗綾」という絹織物の地紋として使われていたそうです。
先ほどから出ている地紋とは、着物を織る際に織り出される文様のことです。文様自体に色などが付けられて表現されているわけではなく、生地自体についている文様というような感じで、触ると凸凹しています。紗綾文様は地紋としては一般的なものだそうで、私の持っている振袖だけでなく他の着物にも地紋として使われていました。
他にも亀甲文様は「浦島虎徹(うらしまこてつ)」の紋や「大和守安定(やまとのかみやすさだ)」の刀帯(かたなおび)、霞文様は「山姥切国広(やまんばきりくにひろ)」の紋、梅は「鶯丸(うぐいすまる)」「五虎退(ごこたい)」の紋、桜は「次郎太刀(じろうたち)」の紋など、着物一枚でも文様を探してみると刀剣男士の衣装と同じ文様は意外と多くありました。
持っている振袖の袖部分 和柄がたくさんあります
紋も文様も、一つひとつに意味が込められています。例えば、円は「天」、正方形は「地」、正三角形は「鱗」など、ただの丸や四角、三角ではないのですね。
紋や着物の文様に込められた意味を理解してから刀剣男士を見てみると、より深く彼らについて知れたような気持ちになります。また、彼らを描いたイラストレーターの方のキャラクター制作にかける知識や情熱のようなものも感じ取れるのではないでしょうか。
長々とお話ししてしまいましたが、もう「かっこいいだけ」「ただのゲーム」なんて思いませんよね? 笑。みなさんもご自身の家紋や成人式で着た振袖などの文様を改めて見てみてください。きっと驚きの発見がありますよ。
これからも刀剣乱舞を通して、たくさんの刀剣男士や日本の心、イラストレーターの方と出会えるのが楽しみです。
今回のお話を通じて、改めて「日本人でよかった」「日本って良いな」と思う小さなきっかけになればと思います。
参考文献
・刀剣乱舞、刀剣男士について
公式設定画集『刀剣乱舞絢爛図録』
発行人:でじたろう
発行所:株式会社ニトロプラス
・文様など和柄について
『Illustratorジャパンメソッド』
著者:井上のきあ
発行人:藤岡功
発行:株式会社 エムディエヌコーポレーション
・家紋について
http://www.harimaya.com/o_kamon1/yurai/a_yurai/yurai.html