こんにちは。2年のとーやです。今回は、私が9月2日に観劇した『ミュージカル「刀剣乱舞」 髭切膝丸 双騎出陣2020 ～SOGA～』について書こうと思います。

　皆さんは、2.5次元という言葉を聞いたことはありますか？　2.5次元とは、マンガやアニメなどの「2次元」のキャラクターを「3次元」の役者が演じることから、中間の数字をとって呼ばれているものです。最近では様々な作品が舞台化されており、市場規模は年々大きくなっています。
　『ミュージカル「刀剣乱舞」』は、刀剣の付喪神である刀剣男士が歴史を守るゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』から派生したメディアミックスの一つです。略して刀ミュと呼ばれているのですが、2.5次元ミュージカルから始まり、武道館でのライブ、海外公演、更には第69回NHK紅白歌合戦への出場を決めるなど、大きく発展してきました。今回の『双騎出陣』は再演にあたり、昨年に東京で上演されていた時、私は千秋楽のライブビューイングを観劇していました。
　しかし今年は新型コロナウイルスの影響で、3月から5月に行われる予定だった公演はほぼ中止となっており、この『双騎出陣』も開催されることを祈るばかりでした。ずっと直接舞台を観たいと思っていたので、感染症対策を行った上で上演されることが決まった時は、本当に嬉しかったです。

　この『髭切膝丸 双騎出陣』は、源氏の刀であり兄弟刀でもある、髭切と膝丸という刀剣男士が主役です。舞台は1部と2部に分かれており、1部では日本三大仇討の一つ『曾我物語』を上演し、2部では源氏兄弟が「現代の戦」と称して、歌や踊りのライブを行います。ライブ中、観客は応援グッズで一緒にステージを盛り上げることができます。
　『ミュージカル「刀剣乱舞」』は刀剣にまつわる歴史を扱うので、物語も重厚であることが多いです。今回の公演のテーマである『曾我物語』とは、平安末期、武士たちの土地争いの中、父を殺された曾我兄弟が復讐を成し遂げる話です。普段の公演では、歴史上の大きな出来事の陰で、刀剣男士が活躍する様子が描かれることが多いのですが、今回の作品は歴史に実在した曾我兄弟を刀剣男士自身が演じるという、刀ミュ作品の中でも異色なものになっていました。
　私は、源氏兄弟として歴史に関わっていく話が中心になるのだろうと油断していたので、いきなり1部で劇中劇を目の当たりにした時、衝撃を受けました。「刀ミュがまた新しいことに挑戦したなあ」と驚きながら、どんどん作品に引き込まれていきました。
　ちなみに、刀剣としての膝丸には曾我物語に関する逸話がありますが、原作である刀剣乱舞のゲーム内では明言されていません。膝丸の口から語られていなかった逸話を採用するなど、刀剣男士の新たな一面を見ることができるのも、メディアミックスの良いところだと思います。

　さて、今回の双騎出陣では、新型コロナウイルスによる影響が未だ予断を許さない中での公演となったので、演出の一部変更がありました。通常の公演では刀剣男士が客席に降りてくることもあるのですが、そういった演出はなくなり、ライブは声援ではなく拍手で応援し、観客は事前に連絡先の登録をするなど、観客側も主催者側も感染症対策を行っていました。
　舞台からは、様々な制約がある中でも最高のものを見せたいという熱意が伝わってきました。曾我物語という日本古来の物語を現代に蘇らせた作品として、双騎出陣はこれ以上ないほど完成されていると思います。人と人との接触を避ける演出に変わったことにより、曾我兄弟が最期を迎えるシーンで、互いに手を伸ばしながらも繋げないという場面変更では、尚のこと兄弟の悲愴さが際立っていました。
　2部が始まる前に、曾我物語の敵役が登場して、ライブでは声援を送ることができないため、拍手で応援をしてほしいと語りかける場面もありました。新しい生活様式に関するアナウンスがあるとは思っていましたが、敵役直々とは思わなかったので、とても面白かったです。また、今回の公演では髭切と膝丸にそれぞれソロパートが作られており、二人のことをより深く知ることができました。
　様々な対策があったものの、刀ミュのライブで直接応援できたのが本当に嬉しかったです。公演を観終わった後は、余韻に浸ったと同時に、新しい日常でも舞台を楽しんでいいのだと思うことができました。

　『ミュージカル「刀剣乱舞」』は、日本の歴史や文化・物語を、現代を生きている私たちに様々な形で伝えてくれる作品だと思います。この『双騎出陣』も、刀ミュの表現したいこと、今できることが示されていたと感じました。今後どのような物語が作られていくのか、またどんな刀剣男士の活躍が見られるのかを、楽しみにしたいと思います。
　刀ミュが様々な物語を魅せるように、作品に触れる方法もたくさんあります。この記事で刀ミュに興味を持たれた方は、今回紹介した『双騎出陣』はもちろん、他の公演やライブ中心の舞台など、気になったものから、作品を知って好きになってもらえると嬉しいです。
　皆さんも『ミュージカル「刀剣乱舞」』を観ることで、もっと日本の歴史や刀剣を知ってみませんか？

参考文献：
■『ミュージカル「刀剣乱舞」』公式サイト　https://musical-toukenranbu.jp/
■ “曾我物語”『国史大辞典』『日本大百科全書』『改訂新版・世界大百科事典』ジャパンナレッジ（オンラインデータベース）、入手先＜https://japanknowledge.com/introduction/keyword.html?i=948＞（2020年10月15日アクセス）