こんにちは、とーやです。皆さんは普段どのような漫画を読んでいますか?
今回ご紹介するのは、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案とした、ホームズの宿敵であるモリアーティ教授の、あったかもしれない物語。大英帝国の階級制度による歪みを描く、構成:竹内良輔、漫画:三好輝の作品、『憂国のモリアーティ』についてお話ししていきます。
世界で最も知られている名探偵、シャーロック・ホームズ。その宿敵であるジェームズ・モリアーティは、ホームズシリーズを続けていくことに疲れた原作者のコナン・ドイルが、物語を終わらせる為に生み出した人物でした。彼は、原典であるホームズシリーズには、全60作品のうち6作品しか登場していません。それでも、ミステリアスで悪のカリスマの代名詞となったモリアーティ教授は、ホームズの熱狂的なファンを指す、シャーロキアンの間で、絶対的な宿敵として今も色濃く語られています。
『憂国のモリアーティ』では、モリアーティは3兄弟として登場します。舞台は大英帝国が最盛期を迎える19世紀末のロンドン。階級制度により、生まれながらに人生がどのようなものなのかが決まってしまう時代。上流階級の貴族が腐敗してしまい、下層階級の人々が日々絶望して生きている国を変えるために、モリアーティ3兄弟が階級制度の打破に挑む、という物語です。主人公は優れた頭脳を持つ、モリアーティ家次男のウィリアム。表向きは教授、裏では犯罪相談役として、彼は悪しき貴族を様々な犯罪によって罰していきます。
この漫画の魅力的なところは、オリジナルの話を展開しながらも、時に「シャーロック・ホームズ」シリーズの事件の裏側を、きちんと描いているところです。要所にホームズシリーズの重要なエピソードを組み込むことで、ホームズの活躍の裏では、モリアーティ教授が暗躍していたのでは? と思わせてくれます。
また、英国を変革するという道のりの中で犠牲が出てしまうことへの葛藤や、仲間内での意見の対立が真正面から描かれることもありますが、登場人物それぞれの考えが尊重されているので、意見のぶつかり合いが起きたとしても、気持ちよく読むことができます。
『憂国のモリアーティ』はメディアミックス展開も多様で、それぞれが異なるストーリーになっているのも楽しいです。ミュージカル・舞台・アニメと展開しているのですが、私は舞台を見ることができていないので、今回はミュージカルとアニメの魅力をお話しします。
『ミュージカル「憂国のモリアーティ」』では、歌唱パートを交えながら原作を表現しています。再現の難しい幼少期のエピソードなどは、回想シーンにするという工夫がされていました。全体的にシリアスな展開の中にも、ここはアドリブだろうな、と笑えるシーンもあり、原作の雰囲気を残しつつ、舞台芸術の強みを活かして、華やかに表現されています。
対してアニメですが、こちらは全体的にかなり大胆な違いがありました。漫画では描かれていない当時のロンドンの様子をアニメでは表現しており、当時の細かい生活描写や犯罪の手口が、丁寧に変更されています。また、ウィリアムが原作の犯罪相談役に近しい行動をしているのも、大きな違いだと思います。漫画では、大事な場面では自ら手を下しているのですが、アニメでは相談役に徹して、殺人などの実際の犯行は依頼人に行わせています。そのこともあり、漫画のモリアーティ3兄弟には「家族」という関係性が強く見えるのですが、アニメの3兄弟は、ビジネスパートナー、共犯者という面が強調されています。
このエッセーを書いている段階では、アニメは4話までしか放送されていません。今後、原作を基にどのように展開されていくのか、モリアーティ3兄弟の関係性についても注目していきたいです。
『憂国のモリアーティ』はミステリ要素を含んでおり、登場人物にも様々な秘密があるので、ネタバレにならない範囲で紹介しましたが、いかがだったでしょうか。このエッセーを読んで、漫画やアニメ、ミュージカルにも触れてもらえると嬉しいです。
これから冬が深まる時季です。皆さんも、こたつに入りながら『憂国のモリアーティ』を楽しんでみませんか?
参考文献:
■コナン・ドイル(原案)、竹内良輔(構成)、三好輝(漫画)、(2016)『憂国のモリアーティ 1』 株式会社集英社
■ミュージカル『憂国のモリアーティ』公式サイト https://www.marv.jp/special/moriarty-1/(2020年11月25日アクセス)
■アニメ『憂国のモリアーティ』公式サイト https://moriarty-anime.com/ (2020年11月5日アクセス)
■コエヌマカズユキ「シャーロック・ホームズ愛好家に話を聞いたら謎が全部解けた」 https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/entry/koenuma08(2020年11月17日アクセス)
『憂国のモリアーティ』を紹介したい!/とーや(2年)
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