あっという間に冬となり、今年も残すは1か月となりました。流行は流行でも、風邪の流行には乗りたくないものです。
さて今回の記事では、今夏、自身の卒業研究を研究会で発表してきたことを報告します。
私は8月21日から23日にかけて宮城県仙台市にある東北大学青葉山北キャンパスで開催された、「第30回天文教育研究会」に参加してきました。天文教育研究会は天文教育普及研究会という団体が年に1度開催する研究会であり、天文分野の教育関係者や、天文の普及に携わっている人・関心のある人が全国から集まる研究会です。教育関係者といっても、研究者や社会教育施設の職員、企業の方、大学生や高校生など職業も年齢も様々です。近畿圏で行われる地方ごとの研究会に参加したことはありますが、全国の研究者や学生が集う大きな研究会に参加するのは今回が初めてでしたので、新幹線に乗っているときから緊張と不安でいっぱいでした。
私の卒業研究のタイトルは「日本における古代インドの宇宙観」です。古代インド人は宇宙を、とぐろを巻いた大蛇の上に亀が乗っており、さらにその上に何頭かの象が乗っており、それらの象が半球の大地を支え、半球の大地には須弥山(しゅみせん/古代インドの世界観の中で中心にあると考えられる想像上の山)があり、太陽や月は須弥山の周りを回っている、というように捉えていました(図1)。現在、古代インドの宇宙観は図鑑や科学館で図1のように紹介されていることが多いのですが、廣瀬匠氏の先行研究(2)では古代インドの文献に図1はなく、確証のない図1が「古代インドの宇宙観」として広まっていることを指摘しています。私はこの古代インドの宇宙観として広まっている図1が、日本で初めて紹介されたのはいつか、どのように普及されていったのかを調べおり、この研究会では経過報告を発表しました。
図1 古代インドの宇宙観とされる図(1)
この研究会での発表形式は口頭発表かポスター発表の選択制で、どちらにするか迷ったのですが、紹介する図が多いため、ポスター発表を選びました。ポスター発表は口頭発表の合間の休憩時間に、気になったポスターを自由に見て回り、ポスター発表者がポスター閲覧者に研究内容を説明します。ポスター発表の時間になると研究について議論をしたり、関連する情報を提供してくださったり、人を紹介してくださったり、多くの方がポスターの前に集まってくださいました。普段、大学に居るだけでは得られないような情報提供や交流があり、大きな収穫がありました。また、自分の発表だけでなく多くの方の発表を見聞きすることができ、大変興味深く有意義な時間でありました。
図2 発表したポスター
諸事情により2日間だけの参加となり、仙台市を観光することはできませんでしたが、研究会に参加している地元の方々は兵庫県から来た私を歓迎してくださって、仙台名物である牛タンのお店を案内してくださり、仙台土産があるお店を教えてくださいました。ひとりで仙台市に来た不安や緊張感を払い除けてもらって、心温まる時間を過ごせました。ぜひ次回は観光しに仙台市へ訪ねたいです。
今回発表した内容は卒業研究の経過報告なので、研究会で得た情報を取り入れつつ研究を進め、仕上げたいと思います。
注
(1)Niklas Müller,Glauben,Wissen und Kunst der alten Hindus,1822,付録
(2)廣瀬匠「誤解だらけの天文学史~『古代インドの宇宙観』を例に」2012,第26回天文教育研究会