こんにちは! メルマガ隊3年生のAKIです。だんだん気温も上がってきて、日中は夏のように熱く感じられます。
みなさんは今年のゴールデンウィークに何処かへ行かれましたでしょうか。私は「KYOTOGRAPHIE(京都国際写真展)」に行ってきました。
「KYOTOGRAPHIE」とは、京都を舞台に開催される、日本でも数少ない国際的な写真祭です。国内外の重要作家の貴重な写真作品や写真コレクションを、趣きのある歴史的建造物やモダンな近現代建築の空間に展示するこの写真祭は、これまでに約25万人が来場し、今年で5回目の開催です。今回は「LOVE」をテーマに、4月15日から5月14日の間、二条城二の丸御殿台所、京都文化博物館別館のほか、通常非公開の町家や寺院、指定文化財等を含む市内16カ所で展覧会が開催されました。また、展覧会を廻る週末ガイドツアーやトークイベント、体験型ワークショップなど、来場者向けイベントや学生・アマチュア・プロに向けた写真にまつわるあらゆるプログラムが用意されていました。
私がこの写真祭を訪れたのは5月5日でした。展示は京都市内の各所で開催されているので1日では回りきれないと判断し、16カ所中8カ所に狙いを定めて烏丸駅を出発しました。その中でもおすすめの3つをご紹介します。
まず、1つ目はオランダ人女性写真家ハンネ・ファン・デル・ワウデの「Emmy’s World」です。この展示では、ワウデが6年間の歳月をかけて個性豊かな老夫婦エミーとベン、その兄弟らの日常と、それを一変させる出来事を追いかけたドキュメンタリー作品です。ささやかな日常がワウデの視線を通して記録され、描かれていました。
このプログラムの素晴らしいところは日常生活の中でみえるベンの凛々しさやエミーの優しさを表した写真を様々な方法で展示しているところです。
例えば、エミーとベンの家やその周りの草原の写真が飾られた部屋では、地面に枯葉が敷き詰められていて踏むと音が鳴り、葉のにおいが感じられました。また、2人の寝室や浴室などの写真が飾られた部屋ではシーツを細く切ったものが地面に敷き詰められていて、そこに裸足で上がることができます。このように見て楽しむだけでなく、五感のすべてを刺激するような展示の仕方にとても感心させられました。
(写真1:枯葉が敷き詰められた部屋)
次に紹介するのは現代美術作家のマウリツィオ・カテランとファッション写真家のピエールパオロ・フェラーリが、アートディレクターにミコール・タルソを迎えて2010年に発刊したアート雑誌の作品を展示した「TOILETPAPER」です。3階建現代建築全棟を使い、彼らの出身国イタリアの食文化やサブカルチャー等々をモチーフに、インパクト溢れる鮮やかな色彩のインスタレーションが展開されていました。
この展示の素晴らしいところは作品を写真として壁に飾るだけでなく、カーペットや電球カバーに写真を印刷することで部屋全体を作品としているところです。3階建ての建物は1階の受付から始まり、2階は墓地や少しぞっとするようなグロテスクな写真を、カラフルな配色でポップに構成した空間で、3階は赤を基調とした鏡張りの部屋に大きな写真が数枚張られている空間でした。どちらの部屋もこの雑誌グループが得意とする、生々しくグロテスクな描写をポップに表現した写真を最大限に生かすような構成になっており、私が行った今回の写真展の中で一番来場者の多い展示でした。
(写真2:2階の展示)
最後に紹介するのはスペインを代表する女性写真家の一人、イサベル・ムニョスを本格的に紹介する、国内初個展「Family Album / Love and Ecstasy」です。「Family Album」はゴリラやチンパンジーなど霊長類の家族愛をテーマに写真にした作品で、ヒトによる家族形成のルーツを探る研究対象としても注目されるゴリラたちに、根源的な愛のあり方を見つめるという趣旨の展示でした。「Love and Ecstasy」では、自らの身体を傷つけながら神に近づこうとする信仰者やいけにえにされる人たちを写した展示でした。
この展示は誉田屋源兵衛の黒蔵(こんだやげんぺいのくろぐら)という古い屋敷で行われており、歩くと軋む床の独特の弾力が足に感じられました。「Family Album」では、そっと静かに歩きたくなるような空間の中で、モノクロ写真で撮られたゴリラやチンパンジーの野生的な家族の形をのぞき見ているような気分にさせられました。野生といえど霊長類の家族の姿は、人間にもある家族や大切な者を思う気持ちや生き方が隠すことなく映し出されているようで、私はこれぞこの写真祭の今年のテーマである愛を素直に表現した作品に思えました。
(写真3:チンパンジーの親子の写真)
「Love and Ecstasy」は、展示に行くまでに一方通行の狭くて埃っぽい螺旋階段を登らなくてはなりません。ささくれた木製の階段は気を抜けば落ちてしまいそうで、緊張しながらも登りきると、そこには薄暗い部屋がひとつだけあり、正面には刺青を彫られるなど、悲鳴をあげてしまいそうなほど痛々しい装飾を施された男性の写真が待ち構えていました。ほかにも現代の日本で生きているだけでは出会わないような神秘的な文化がそこには飾られていて、神への忠誠心、信愛をあらわしていました。私の想像を絶するようなすさまじく生々しい表現でしたが、嫌悪感なく受け入れることができました。18歳未満は見ることのできないのですが、皆さんも機会があれば怖がらずに見ていただきたいと思えるような展示でした。
(写真4:螺旋階段)
ここで紹介した以外にも「KYOTOGRAPHIE」にはさまざまな愛の形を表現した写真家の作品が多く展示されていました。メインの展示は有料のものが多いですが無料で見ることができるものもたくさんあり、そこだけでも十分に楽しむことができました。「KYOTOGRAPHIE2017」はすでに終了してしまいましたが、来年、機会があればぜひ行ってみてください。